Fumiya Odagawa Chiaki Kadota Kanoko Takaya Schoko Tanaka: IN THE LOOP
SEPTEMBER 25 - OCTOBER 2, 2025
PRESS RELEASE:
THE LOOP GALLERYでは、2025年9月25日(木)から10月2日(木)まで、小田川史弥、門田千明、高屋佳乃子、田中尚子によるグループ展 『IN THE LOOP』 を開催いたします。
小田川史弥は、現代を生きる人々の何気ない日常を、幻想的でありながらどこか憂鬱で怪しげな気配に包み込み、夢や思い出のようなやさしさと曖昧さをもって描き出します。丸みを帯びたストロークや流動する背景は、人間の内面や感情を可視化するかのように広がり、鑑賞者を渦のように絵画空間へと引き込みます。視界を思わせる構図は、**「人は他者と記憶を分かち合いながら生きている」**という普遍的な事実を静かに呼び覚まします。鑑賞者はその世界に身を置くことで、自らの心の奥底に眠る曖昧な記憶と重なり合い、懐かしい誰かと再び出会う──その体験こそが、小田川の絵画の核心にあるのです。
門田千明は、北海道の自然豊かな環境に育まれ、森や湖といった風景や、皿の上の果実、花瓶に挿した花など、身近な日常をモチーフに制作を続けてきました。彼女が描き出すのは、対象そのものの形姿ではなく、その場に漂う気配や、季節の移ろいの中で立ち現れる生命の輝きといった、刹那的で目に見えない「印象」です。本展で発表される《White Birch Series》は、門田にとって絵画表現の原点ともいえる白樺を主題としています。幼少期から親しみを抱いてきた白樺の木々は、彼女の心象風景の核をなす存在であり、自然との深い関わりや人の情緒との共鳴を象徴しています。画面には、縦に連なる幹や樹皮の光沢、木漏れ日のきらめきが抽象的な色面や筆致として現れ、観る者に森の中を歩くときのまばゆさや感覚の記憶を想起させます。
インドネシア・バリ島を拠点に活動する高屋佳乃子は、絵画やミクストメディア、立体作品などを通じて、生き物のような柔らかさと存在感を追求します。布や石膏、レジンなど多様な素材を用い、塗装・成形・研磨といった工程を幾度も重ねることで、絵画や彫刻の概念を超えた全く新しい次元の作品「Soft Sculpture」シリーズを生み出しました。その肉体的で有機的なフォルムや、身体や器官を思わせる凹凸や曲線、人肌のような質感は、高屋の手を通じて命を与えられたかのように鼓動を宿し、鑑賞者の潜在意識に家族や友人のような親密さと心地よさをもって語りかけます。本展では、「自分自身に耳を傾けること」と「触覚」の密接な関係に焦点を当てた作品群を紹介します。
田中尚子は、大学時代に滞在したメキシコシティで壁画の歴史や文化に触れたことをきっかけに、馬や蛇、植物、人間などをモチーフとした壁画や絵画の制作を始め、国内外で発表を重ねてきました。近年では絵画にとどまらず、刺繍や陶芸といった多様なメディウムを横断しながら、異なる文化の影響や独自の視点を融合させた表現を探究しています。田中の作品において特徴的なのは、鮮烈な色彩と伸びやかな筆致で描かれる動物や果実といった寓話的なモチーフです。本展で展示する「Morning Cup」「Night Glass」には、果実が刺繍で縫い込まれ、絵の具の平面性と異素材の重なりが、画面に触覚的な奥行きと遊び心を生み出しています。
ARTISTS:

制作するにあたって身近なものをその間に、暗示や推測を誘い背景に広がる秘密を想像したような作品にします。 人間が親密になる時、その影で別の誰かとの関係が消えるような気配に興味を惹かれるのです。 その人間関係の間に余白が生まれる、幸福とともに不安や孤独も引き寄せられます。
門田 千明 (CHIAKI KADOTA)
この度は、私の主軸となる《White Birch Series》を発表致します。
刻一刻と移ろう季節の中で、静かに佇む白樺に私は寛容なこころの在り方をみています。
また、その佇まいに私自身を含む「人」と共鳴する情緒の存在を感じています。
本シリーズでは、
そのような揺らぎあるこころと、
自然界に内在する客観的事象とを包括すべく色彩やフォルムを通して表現しています。
ご自由にご高覧頂けましたら幸いです。

私が”触覚”のことを意識的に認識し始めたのはここ数年のこと。
思い返してみれば幼少期から触感への執着があって、無意識にカタチにしていた。
身体は先に表現していたんだ。ここ年々つくるものの”カタチ”や”質感”は視覚的に肌触りが増している。
私は作品を生み出すときなるべく考えないようにして手を動かす。
一つ一つの段階の度に新しい私がその一つ前の段階の私に対してレスポンスする。 最初から終着点は決めない。
一番最後に完成図が見える。すぐ見える時もあれば何回も変えてやっと見える時もある。私にとって”色”は生きているかのように新鮮なもの。
微妙な違いで最終形態が変わる。その違いは多分私にしか分からない。わけの分からないものに関する強いワクワク感はすごく大事だと思う。
新しい素材に出会い、好奇心に従って、あれこれ試しながら今回の作品たちが生まれた。
人は日常生活の中で、物事をあれこれと考えている。「今日は何を着て行こうかな」、「今日はこの道通ろう」「これが食べたいな」
それとは別の無意識の世界で生きるもう一人の自分。その無意識というやつは本人である私自身にも全く認識できない。無意識での思考は視覚的なイメージだったり。。
触覚は私たちの身近にある。
立っている地面だったり、着ている服だったり、触れている全てのものが触覚を通して感じる。
あまりにも身近すぎて気づかない、”身体”を通した事で残った体験の記憶。触覚は五感の中で最も発達が早いらしい。
妊娠10週目の頃から自分の身体や子宮壁に解れ、学習が始まっていると知り、私はますます触覚への興味が深まった。
赤ちゃんってなんでも触れたり、口に入れたりするのは、見たり、聴いたりするよりも確かな情報を得られる手段だから。
私たちは生まれて間もない頃、誰しもが触覚的な存在だった。
無意識の世界に漂う視覚イメージ。神経を通して感じ取る極めて個人的な感覚の触覚。
自分の心に耳を傾けて、好きなことを好きなだけして、ただ感じて、その肌触りみたいなものを楽しめたらいいと思う。
田中 尚子 (SCHOKO TANAKA)

幼少期を海外で過ごした経験を背景に、独学で絵画、テキスタイル、陶芸など自身の表現の幅を広げてきた。
特に、メキシコの壁画運動における公共性とストリートカルチャーの身体性に影響を受け、現在は壁画を軸として制作に取り組んでいる。
馬や蛇、植物、人物などを象徴的なモチーフとし、鮮やかな色彩によって構成される作品は、自身にとって言語の一形態であり、他者との対話を促す媒体でもある。
これまでに在日メキシコ大使館や海外での壁画制作に加え、国内外のブランドとのコラボレーションも手がけている。
展覧会詳細
「IN THE LOOP」
小田川 史弥、門田 千明、高屋 佳乃子、田中 尚子
会期:2025年9月25日(木)〜10月2日(木)
開廊時間:11:00 – 18:00
休廊日:なし
会場:Frozen Fountain Meguro